マゾヒスティックピクニック 足立重信公の祟り
2011年 04月 10日

11月某日 嵐の前の「重信川河口」
家族の住む愛媛県松山市に行った時のこと。
ある早朝、この私がエプロンなんぞして、
ギリギリ人間の私が、割り箸、醤油、お手拭きも早々にセット完了。
これは凄いんである!
それはもうワクワクとして、
おやつも完璧~。はいほ~!!!
「冬も近い。シギやチドリ、鴨も沢山来ているだろう。
え~い、足立重信(※)待っておれよ!
※重信川の名前の由来になった松山ゆかりの武将で、
しかし....海の気象は変わりやすい。
あっという間に黒雲立ちこめ、突風が吹き、河口は大荒れの天気に!
わたしが慣れぬことをしたからだろうか?
凍てつく「寒さ!」「突風!」のみならず「雷鳴!」が轟き、
雹が止んで少し陽が差し込んだかと思えば「虹」が出現!
(一番下の写真参照)
気象学者に解説して頂きたい位だが、もうどうでもよくなった。
とにかく突風と急な温度の下降で凍えそうだった。
はっ!・・・・コ、コレは もしかして「重信公の祟り」か?
・・・しかし、しかしだ!
「何であろうと......このニギリメシは外で食べるのじゃ~~!」
「11月のピクニック」初心貫徹あるのみ!
私は、躊躇する家族を無理やり連れ回し、見晴らしの良い岸壁(吹きさらし)を陣取り、
あまりの寒さで、弁当は冷蔵庫に入れたかのごとく冷えきっていた。
「いっ、いっただっきまあ~す!!」
でも、あんまし寒いと・・・
味って解らないみたいでした。
寒さと突風で手はかじかみ、耳は痛いし、帽子はすっ飛ぶ、鼻水が・・・涙が・・・何しろ感じるものが多すぎるのだ。
とにかく、みな、震える手でオニギリを握りしめ、
ひっくり返りそうになるペットボトルを不自然な格好で支えながら・・・
意地になって「ウマイ!!」を連発した!
いや、「うまい!」と叫び続けなければ、食べられなかった・・・
と言ったほうが正しい。まるで滝行の様でしたから。
髪は荒海のコンブの如くボウボウと舞い上がり、
偶然通りがかった地元の方々はみな、見てはいけないものを見たような表情をし、遠い眼をして去っていきました。
今考えれば、道連れにした家族には酷だっただろうか?
でも、家族は「ウマイ!!」と何度も叫んでくれていたではないか!
家族とはありがたい!でも・・・
食べ終わる頃には みな顔色が退色しておりました。
しかし・・・
何でこんなに耐えながら外で食べなきゃんらんのか?
・・・それを言っちゃはじまらないんです。
北風と太陽って童話・・・好きだもん、私。
かくして11月の楽しいピクニックは終了した。
さて帰ってから、冷えきった体が回復するまでの意識もうろうとした時間に、
以前、ある夏に松山を訪問した際、
その墓は「ロシア兵捕虜達の墓」の脇にポツンとあった。
日露戦争時、捕虜になったものの松山市民に家族の様にもてなされたことで有名な、
「あれ?... 重信川の重信さんだ... 奇遇だなあ。」
重信川が大好きな私は、親しみを込めて墓前に手を合わせた。
手を合わせていたら、なんだか可笑しくなって笑ってしまった。
そして「ではねえーまたくるねー」とつぶやいて、墓を後にしようとした、
するとその時だ! にわかに大雨が降って、
「・・・重信さん、なんだってまた治水事業のあなたが・・・
背筋がゾクっとした。
えっ??、まさか・・・
大雨は「足立重信の墓」にしか降っていなかったのだ!!
こんなことってあるのだろうか???
信じられないけど、濡れたのは私一人に違いなかった。
見上げれば 空は青く晴天。雲のかけらすら見当たらない。
全く不思議な気分だった。
「一体なんだったんだ???、解せん。解せん。」
私は「解せん、解せん」と呟きながら、
その夜、のこと。
翌日になっても「解せん気分」は尾を引いていた。
その日は朝から雨が降っており、既に夕方になっていた。
でも、どうしても「呼ばれている」気がして、
バスで一時間ほどで到着。もう日没も近い。
どうしたことか、川に到着するやいなや
雲の切れ目から光の筋が何本ものび、
灰色の海上のあちこちに「光の丸舞台」が現れた。
そしてついに、雲ひとつ無くなった。
太陽が真っ赤だ。でっかい線香花火みたいだ。
シギやチドリが河口を群れ飛び、シルエットが美しい。
今まで見た夕日の中で断トツに美しかった。
いつの間にか、カメラと三脚を持った人々が河口にたくさん集まっていた。
そのうちの一人のおじさんが話かけてきた。地元の方だった。
「こんな奇麗な夕日は、年に何度も見れんけんね。
ほれ、お日さまの回りに雲のかけらも無かろう?
それも今の時分は、日が河口の真ん中に沈むし、こんなん めったにないことよ。
あんた、東京から来なすったなら、相当運がええよ。」
・・・密かに私は思った。
「重信のおっちゃん...ありがとう!!!」
治水事業のエキスパートだった重信のおっちゃんは、
足立重信はまだ事業に携わっているのだろうか??
とにかく....相当つむじの曲がった方の様である。